ミサイル - Wikipedia

ミサイル

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ミサイル(Missile、誘導弾)は軍事兵器であり、なんらかの誘導に従って自ら目標を攻撃する飛行装置である。ロケットジェットエンジンなどを推進力に空中を飛行し、電子装置を用いて遠隔操縦や自律操縦によって目標に誘導される。誘導飛翔体という語が用いられることもある。

目次

[編集] 語源

ラテン語の動詞 "mittere"(投げる)から派生した形容詞"missile"(投げられるもの)でありローマ時代ではミッシレと呼ばれていた。原義では投射体、飛び道具、投石を指すが、現代では主に推進システムと誘導システムを持つ兵器を指す。

[編集] 投射兵器

ミサイルは推進装置と誘導装置を持ち、推進装置だけで誘導装置を持たないロケット弾や、推進装置を持たず誘導装置だけを持つ誘導爆弾とは区別される。推進装置と誘導装置を共に持たないものが砲弾や無誘導爆弾である。落下を含めて空を飛ぶことで目標を攻撃するすべての投射兵器がこれらのいずれかに分類できる。軍用航空機は空を飛ぶことで目標を攻撃するが、自ら目標に向かって失われることは想定されておらず、砲弾と大砲の関係のように別の投射体を放つためのプラットフォームとなっている兵器である。

[編集] 分類

エグゾセミサイル発射の瞬間

以下にミサイルの分類を示す。必ずしもすべてのミサイルが下記の内の1種類に分類される訳ではなく、空対地ミサイル(ASM)が同時に対戦車ミサイル(ATM)や巡航ミサイルであるなど、同時に複数に分類できるものがある。

[編集] 対地ミサイル

対地ミサイルは地上の目標を攻撃するミサイルである。1人で扱う小型のものから巨大なICBMまでさまざまな種類がある。

弾道ミサイル
大気圏上層や大気圏外を弾道飛行して目標へ到達するミサイル。射程距離で分類されるが明確な基準はない。ICBMだけはSALT-IIで射程5,500km以上の弾道ミサイルと規定されている。核弾頭を積んだ戦略ミサイルと通常弾頭を積んだ戦術ミサイルがある。
大陸間弾道ミサイル (ICBM, InterContinental Ballistic Missile)
中距離弾道ミサイル (IRBM, Intermediate-Range Ballistic Missile)
射程2,000-6,000km程度のもの。
準中距離弾道ミサイル (MRBM, Medium-Range Ballistic Missile)
射程800-1,600km程度のもの。
短距離弾道ミサイル (SRBM, Short-Range Ballistic Missile)
射程約800km以下のもの。スカッドミサイルもこれに入る。
潜水艦発射弾道ミサイル (SLBM, Submarine-Launched Ballistic Missile)
射程の長短にかかわらず潜水艦から発射される弾道ミサイルはすべてSLBMに分類される。
空中発射弾道ミサイル (ALBM, Air-Launched Ballistic Missile)
射程の長短にかかわらず航空機から発射される弾道ミサイルはすべてALBMに分類される。現在までに実戦配備されたALBMは無い。
地対地ミサイル (SSM, Surface-to-Surface Missile)
地上から発射される対地ミサイル。
空対地ミサイル (ASM, Air-to-Surface Missile)
航空機から発射される対地ミサイル。
艦対地ミサイル (SSM, Ship-to-Surface Missile)
艦船から発射される対地ミサイル。地対地ミサイルの略語もSSMで紛らわしいため、艦対地ミサイルを特に区別してShSMと呼ぶこともある。
対レーダーミサイル (ARM, Anti-Radiation Missile)
レーダーを攻撃するミサイル。誘導装置が通常の対地ミサイルとは異なるため、専用に開発・運用される。主な目標は地上配備のレーダーであるが、巡洋艦などに搭載されている艦載レーダーも攻撃することができる。航空機である早期警戒機のレーダー波を探知するミサイルは対空ミサイルに分類される。
対戦車ミサイル (ATM, Anti-Tank Missile)
対戦車ミサイルは、地上の戦車や装甲/非装甲車両を攻撃することを主目的とするミサイルである。歩兵、車両、ヘリコプターから運用されるが、固定翼航空機から運用される場合は空対地ミサイルとなり対戦車ミサイルとは呼ばれない事が多い。巡航ミサイルと同様にほとんどの対戦車ミサイルは比較的低速での飛翔が特徴である。

[編集] 巡航ミサイル

巡航ミサイル (CM, Cruise Missile) は発射プラットフォームにかかわらず大気圏内を目標まで水平に動力飛行するミサイルのうち、特に射程距離が長いミサイルである。長距離を飛翔するために固定翼航空機と同等に、主翼とジェットエンジンを備えることが多く、長い航続距離を得る代わりに音速以下での揚力による飛行を行うものが多い。破壊対象は地上目標もしくは艦船であり、長距離の対地ミサイルや対艦ミサイルの別称といえる。航空機同様に撃墜を避けるために低空飛行を行うことが求められ、地表高度に沿いながら防空レーダー網を左右に避けながら複雑な飛行ルートを行うなどの、高度な誘導装置を備えることで知られている。核弾頭を積んだ戦略ミサイルと通常弾頭を積んだ戦術ミサイルがある。ステルス性能の向上と並んで超音速巡航能力が求められており、、2008年現在はいくつかの超音速巡航ミサイルの配備が始まっているとされている。

[編集] 対艦ミサイル

対艦ミサイルは水上艦船を攻撃するミサイルである。艦船の移動速度は車両と同等のため、対艦ミサイルを対地ミサイルの一部として扱う事がある。この場合の略号はShipではなくSurfaceを用いる。洋上は彼我共に探知範囲が大きくなるため対艦ミサイルは一般的な対地ミサイルより射程が長く、中には弾道ミサイルに匹敵する射程を持つミサイルもあり、これらは対艦用の巡航ミサイルとも呼べる。

地対艦ミサイル (SSM, Surface-to-Ship Missile)
陸上から発射される対艦ミサイル。沿岸防備用兵器として配備される事が多い。車両に搭載した移動発射式のものが主体である。
艦対艦ミサイル (SSM, Ship-to-Ship Missile)
水上艦から発射される対艦ミサイル。明示的に艦対艦ミサイルとする場合は潜水艦から発射される対艦ミサイルは含まれない事が多い。
空対艦ミサイル (ASM, Air-to-Ship Missile)
航空機から発射される対艦ミサイル。航空機は機動力に優れるため、このグループのミサイルの射程は他のプラットフォームから発射される対艦ミサイルより短いものが多い。

[編集] 対潜ミサイル

対潜ミサイルは水中の潜水艦を攻撃するミサイルで、その多くが弾頭相当として短魚雷を備えて着水時に分離する。ミサイルであると共に対潜兵器でもある。

[編集] 対空ミサイル

ASATミサイルの飛行時

対空ミサイルは空中の目標を攻撃するミサイルである。

地対空ミサイル (SAM, Surface-to-Air Missile)
地上から発射される対空ミサイル。拠点防空用の長射程ミサイルと野戦防空用の中短射程ミサイルに分けられる。
艦対空ミサイル (SAM, Ship-to-Air Missile)
艦船から発射される対空ミサイル。個艦防空用の短射程ミサイルと艦隊防空用の長射程ミサイルに分けられる。
空対空ミサイル (AAM, Air-to-Air Missile)
航空機から発射される対空ミサイル。航空機同士の戦闘で使用される兵器である。視程外距離戦闘で用いられる長射程ミサイルと近距離で使用される短射程ミサイルがある。短射程ミサイルはヘリコプターや低脅威度の航空目標への攻撃や格闘戦に用いられる。
弾道弾迎撃ミサイル (ABM, Anti-Ballistic Missile)
空中の弾道ミサイルを迎撃するミサイル。宇宙空間の飛行中や大気圏の落下中の高速度の目標ミサイルを迎撃するためには、高度な技術が求められる。
対衛星ミサイル (ASAT, Anti-SATellite missile)
衛星軌道上の人工衛星を攻撃するミサイル。技術的にも政治的にもかなり特殊なミサイルである。

[編集] ミサイル・システム

多くのミサイルは、飛翔体の他にも外部での誘導や発射にさまざまな装置を必要とする。以下に主要なミサイル・システムの構成要素を示す。簡易な肩撃ち式の対戦車ミサイルでは、射撃統制に複雑な装置は必要とせず、追尾レーダーも飛翔体に内蔵したものだけで済ますミサイルもある。

  • 射撃統制装置(=発射プラットフォーム側の誘導装置)
    • 捜索レーダー、追尾レーダー、IFF装置
    • 射撃計算機、発射機、通信装置
  • 運搬装置
  • ミサイル(飛翔体)[1]

[編集] 構造

ミサイルの飛翔体は、ほぼ同じような構造から成り立っており、構成する装置類を頭部から後部に向かって順に示す。 モジュール化構造を備えた飛翔体では、筐体となる外殻と特にそのモジュール同士の接続部に高い強度が求められる。

[編集] 索敵装置

目標を捜索 (search)、発見・識別するシステム。索敵装置にはレーダーソナーなどの捜索システムと発見した目標の識別を行う敵味方識別装置 (IFF, Identification Friend or Foe) が含まれる。赤外線誘導ミサイルや長射程のミサイル、対地ミサイルの場合、ミサイル本体に搭載されていることも多く、英語ではこれをシーカー (seeker) と呼ぶ。

[編集] 誘導装置

詳細はミサイルの誘導方式を参照

誘導装置はミサイルの先端付近に取り付けられ、目標を追跡 (tracking) し目標の現在位置とミサイル自身の進行方向とのずれを随時計算して操縦装置へ進路補正を指示する。英語ではガイダンス・システム (guidance system) 、ホーミング・システム (homing system) と呼ぶ。ミサイルには複数種類の誘導装置が搭載される事があり、それぞれ使用される時点に応じて中間誘導装置 (Intermediate Guidance system)、終末誘導装置 (terminal guidance system) と呼ばれる。一種類しか搭載されていない場合は単に誘導装置と呼ばれる。

[編集] 弾頭

弾頭は誘導装置の直後に置かれる事が多く、ミサイルが目標を破壊するために必要な装置である。英語ではウォーヘッド (warhead) と呼ぶ。

通常弾頭
核兵器や生物兵器、化学兵器以外の弾頭であり、弾頭部の重量は携帯ミサイルの数キログラムから対艦ミサイルの数百キログラムまでの幅がある。ミサイルは飛翔するために軽量であることが要求され、多くの爆弾と比べれば弾殻は薄く、肉厚高抗張力合金鋼やチタン合金で作られているものが多い。
  • 榴弾弾頭:高性能火薬を主体とした弾頭である。通常型榴弾弾頭は均質な弾殻に高性能火薬が詰められ、起爆のタイミングの違いによって内爆型と外爆型とがある。調整破片型(Pre-formed fragment)榴弾弾頭は弾殻に規則的な割れ目があるか、多数の鋼鉄球や鋼鉄片、タングステン・ペレットが配置されており、加害効果を高めている。
  • 集束型弾頭:多数のフレッシェット(Flechette)と呼ばれる三角帽子状の矢となる鋼鉄棒が収められており、爆発によって無駄なく計画された方向へと飛び、軟目標を加害する。ヘリコプターや兵員への攻撃に使用される。
  • ロッド型弾頭:弾頭内に多数の金属ロッドが収められており、隣り合うロッド間の連接の有無によって連続ロッド型と不連続ロッド型がある。連続ロッド型では弾頭が爆発するとロッド同士が空中でいくつかの大きな輪を作る。不連続ロッド型ではロッド同士がバラバラで放たれる。共に航空機やミサイルの撃墜を目的に使用される。
  • 指向性爆薬弾頭:単純な炸裂弾ではなく、爆薬の爆発エネルギーによって前方や下方といった1方向にだけ高速で金属を打ち出す仕組みを持つ。成形炸薬弾頭では高速(7,000-9,000m/s)の棒状金属を打ち出し、モンロー/ノイマン効果により、直近にある口径の6-8倍の厚さの均質圧延鋼板を打ち抜く。前後に2つの成形炸薬弾を並べたタンデム型もある。対戦車ミサイルの弾頭で使用される。自己鍛造破片(Self forming fragment)弾頭では高速(2,000-3,000m/s)の金属塊を打ち出しミズネ・シャルダン効果(Misne-schardin effect)によって、口径の1,000倍の距離までの1倍の均質圧延鋼板を打ち抜く。上面装甲を狙うトップアタック式(オーバーフライ式)の対戦車ミサイルの弾頭で使用さる。また、榴弾弾頭に近い構成で、爆薬に複数の起爆点を持たせて爆発のエネルギーと破片を特定方向に集中させるタイプの指向性爆薬弾頭もある[1]
  • ディスペンサー:クラスター爆弾のように対人、対戦車、対滑走路用の子弾子(サブミュニション、小型爆弾)を内部に多数抱えて目標上空でこれらを散布するための運搬容器であるディスペンサーを弾頭として持つものがある。これらによって目標周辺を広範囲に制圧することができる。短距離地対地ミサイルや巡航ミサイルに搭載されている。MLRSATACMSの対戦車子弾子BATには誘導装置が組み込まれており、小型の誘導爆弾となっている。炭素繊維フィラメント・ボビンを無数に詰めたディスペンサー弾頭は電力設備の配線をショートさせる。
核弾頭
核弾頭は数キロトンの威力を持つ原子爆弾から戦略兵器の熱核爆弾(水爆など)の数メガトンまでの幅があり、多弾頭やデコイ、機動バスなどの多様なバリエーションがある。
生物/化学兵器弾頭
生物兵器化学兵器を搭載した弾頭。いずれも国際条約によって使用が禁止されている。
無弾頭
直撃によって目標を破壊する THAADミサイルのような運動エネルギー迎撃体(Kinetic Kill Vehicle)と呼ばれるミサイルは爆発するような弾頭を備えていない。ただし、パトリオットPAC-3ミサイルのように直撃によって目標を破壊する形式でも破片散布型弾頭を備えているものもある。

[編集] 信管

詳細は信管を参照

弾頭を起爆するための装置で、弾頭に組み込まれて使用される。英語ではフューズ (fuse) という。基本的には以下の種類があり、多くの高性能信管では設定によって複数の基本的な機能を組み合わせて起爆できるようになっている。

触接信管
目標へ衝突した瞬間に動作する信管。接触信管、衝撃信管とも呼ばれる。対戦車ミサイルなどで使用されるほか、大部分のミサイルでバックアップ用に装備されている。
遅延信管
目標へ衝突した瞬間からタイマーを働かせて、設定したわずかな時間の後に起爆する信管。対艦ミサイルなどで使用される[1]
近接信管
信管から電磁波を発し、その反射波が一定以上の強さになった時点で動作する信管である。信管から一定の距離以内に目標が侵入した時点で動作する。最初期から現在まで最も一般的な近接信管は電波を利用する物であり、信管から発する電波の反射波が一定以上の強度になると動作する。最近ではレーザー光線を利用する近接信管も開発されている。
時限信管
起動から一定時間後に動作する信管。現在では他の信管のバックアップ用に装備される。
高度信管
電波高度計によって、ミサイルが地上から一定の高度に達した際に作動する信管。主に弾道ミサイルに搭載された核弾頭に使用される。
深度信管
圧力信管とも呼ばれ、事前に調定された一定の水圧(深度)に達した際に作動する信管。対潜ミサイルの弾頭に装備される。

[編集] 燃料区画

ミサイルの推進燃料を収めている区画であり、ミサイル後部で大きな位置を占める。

円筒形のロケット形態を採る限りは、電気配線などが燃料区画をまたいで上下をつなぐのにエレガントな解決策がなく、外部側面に張り付いている場合が多い。

固体ロケット燃料
固体燃料ロケットでは外殻内部に高度技術を駆使して固体推進剤が詰められ、外殻がロケットモーターの圧力容器を兼ねている。液体燃料に比べて比推力は総じて劣り、圧力容器として作るために外板が重くなるが、外殻一杯に充填出来、特別な燃焼装置が空間を占めることもないために、液体燃料方式と比べてそれほど劣ることはない。
液体ロケット燃料
液体燃料ロケットでは多くの場合、ロケットの外殻とは別に内部に球形やシリンダー形状の燃料タンクを備えている。液体酸化剤と液体燃料という2種類のタンクを備える。2つの液体は極低温保存が求められたり、致死性で危険な薬品や金属を徐々に腐食したりするものが多く保守管理が難しい。初期のICBMなどでは本方式が用いられたが、常時ミサイルのタンクにこれらの液体を入れておくには問題が多く、発射時に注入する方式では即応性が必要な軍用ミサイルとしては許容できないために、21世紀の現在では一部の後進国を除けばほとんど使用されなくなっている。
ジェット燃料
推進機にジェットエンジンが採用されていれば液体のジェット燃料がタンクに保管される。一般に、ジェット燃料タンクの外皮がミサイル外殻の一部を構成し、前方の誘導部、または弾頭部と隔壁を経由して接合され、後方は小型ジェットエンジン部と隔壁を経由して接合される。燃料区画の一部をジェットエンジン用の空気ダクトが占めるレイアウトのものが多い。酸化剤は不要なため、重量と容積で有利となり、ターボジェットという燃料効率の良さも手伝って長距離飛行を可能とするが、ジェットエンジンの重量容積とコストでは不利となる。

[編集] 飛翔制御

詳細はミサイルの飛翔制御方式を参照

ミサイルの飛行方向を制御するには以下の方式がある。

排気ベーン
ノズルの中に排気ベーン、またはジェットベーンと呼ばれる推力偏向板を設置し、これを動かすことで推力方向を任意の方向へ向けて機体を制御する。史上最初の弾道ミサイルであるV2/A4には黒鉛でできた排気ベーンが採用されていた。V2/A4の直接の子孫であるR-17(SS-1B Scud)でも排気ベーンが採用されている。
翼による空力制御
ミサイルに取りつけた翼を動かすことでミサイルの姿勢を制御する。現状では最もポピュラーな制御方法である。宇宙空間に進出する弾道ミサイルではこの方法は使用できない。またミサイルの側面に翼が取りつけられるため体積効率が良く無い。このため保管の際には分解しておき発射直前に翼をとりつけたり、翼を機体内に格納したり機体まわりに折り畳んでおき、発射後に自動的に伸展する方法が取られる。一般には後退翼や三角翼がもちいられ、動翼と静翼の二組が取りつけられる。静翼はミサイルの方向安定を司り、大きな面積を持つ。動翼はミサイルの操縦を司り、誘導装置からの信号を元に操縦装置によって駆動される。多くは動翼を後翼とするが高機動ミサイルでは動翼を前翼とする設計もある。三角翼では翼幅が大きくなるため、スペースに制約がある艦載ミサイルではスタンダードミサイル発展型シースパロー(ESSM)艦対空ミサイルのようにミサイルの全長に渡って取り付けられた細長い翼を静翼とする設計が用いられる。ロシアでは短距離弾道ミサイルOTR-21 Tochka (SS-21) に採用された「すのこ尾翼」が空対空ミサイルのR-77でも採用された。この形式の尾翼は最小限の体積で表面積を大きく取れるため有効な操縦が可能とされる。
可動ノズルによる推力偏向制御 (TVC, Thrust vector control)
ロケットエンジンのノズルをジンバルやスイベルなどに載せて可動とし、ノズルの方向を変える事で推力の方向を変更しミサイルを操縦する。翼による空力制御と異なり大気圏外でも使用できるほか、翼が不要になればミサイルはコンパクトとなり体積効率が良くなる。航空機では狭い機内や機外により多くのミサイルを搭載できるようになる。ノズルの機構は複雑になる。アメリカのジュピター中距離弾道ミサイルポラリス潜水艦発射弾道ミサイルVL-ASROC等で採用されている。
バーニアノズルによる制御
主エンジンとは別に姿勢制御用の小型ノズル(バーニアノズル)を設置し、適宜噴射して姿勢を制御する。史上最初の大陸間弾道弾であるR-7のRD-107/RD-108エンジンでは合計12基のバーニアノズルで姿勢を制御していた。バーニアノズルは独立したロケットエンジンである場合と主エンジンの排気を導く場合がある。

[編集] 操向装置

操舵翼
操舵翼によって飛翔方向を決めるミサイルでは、弾体を効果的に操向するために、操舵翼(=動翼)は前部か後部の比較的端部に備わっている。
スラスト・ベクトル装置
ノズル噴射流の偏向によって飛翔方向を決めるミサイルでは、ベーンや可動ノズルが備わっている。
操舵の動力源
姿勢制御を行う操舵装置を駆動する動力源には以下の物がある。
気体タンク
タンクに蓄えられた高圧ガスの圧力
ホットガス
薬品の反応によって生じるガスの圧力
バッテリー、発電機
電動モーターによる駆動

[編集] 安定翼

操向用の操舵翼とは別に安定翼(=固定翼)によって飛翔の安定性を高めるのが通常である。主翼とも呼ばれる。固定式と展張式のものがある。 展張式安定翼では、ミサイル内に格納されているものと、ミサイルの周囲を囲むように折り畳まれているものがある。多くがスプリングによって発射直後に展張する。 操舵翼も展張式のものがある。

[編集] エンジン

ミサイルを飛翔させる主エンジンには以下の種類がある。

固体燃料ロケットエンジン
現代のミサイルは固体燃料を用いるロケットエンジンが主流となっている。これは構造が簡単なため安価であり整備が簡便である点が大きい。
液体ロケットエンジン
液体燃料を用いるロケットエンジンは固体燃料ロケットエンジンに比べておおむね比推力に優れているため、初期のミサイルや長射程を要求される弾道ミサイルで採用されていた。ただし燃料ポンプを始めとする機構的な複雑さや燃料自体の危険性により一定の整備が必要になる。
ジェットエンジン
ジェットエンジンは空気中の酸素を酸化剤として用いることで酸化剤タンクを廃しその分を燃料タンクを大きくする事で一般的なロケットエンジンより長射程を得ることができる。大気圏内を終始飛行し、長射程を要求される巡航ミサイル、対艦ミサイル等で採用されている。空気が無い宇宙空間や海中では使用できないほか、ジェットエンジンは液体ロケットエンジンと同様に機構的な複雑さを持つため、エンジンとしては高価になる。ただしジェットエンジンは航空機用エンジンとして大量生産されているため設計や生産ラインを流用する事で調達コストを削減する事ができる。
ラムジェット
ラムジェットは圧縮機とタービンが無く、超音速で飛翔する際の衝撃波をそのまま空気の圧縮に利用するジェットエンジンである。エンジンに可動部が無いため生産コストを削減する事が可能となる。ジェットエンジンと同様に空気中の酸素を酸化剤として利用できるため酸化剤を搭載しなくてもよく、その分を燃料の搭載に当てることができるためジェットエンジンに並ぶ長射程を実現できる。ラムジェットエンジンを動作させるためには飛翔体を超音速まで加速する必要があり、そのためにブースターを組み合わせて使用する。ブースターは外装とされる事が多いが、全体にかさばるためロシアやフランスのミサイルでは統合型ラムジェットエンジンが採用されている。同エンジンは固体燃料ロケットで上昇・加速し、固体燃料が燃え尽きるとその空隙に空気取り入れ口から取り入れた超音速流を導き、燃料を吹き込んで燃焼させるもので、ブースターを外装とせずラムジェットと統合・一体化させているため極めてコンパクトになるエンジンである。

固体燃料ロケットは「ロケットモーター」であり、液体燃料ロケットは「ロケットエンジン」とする名称の使い分けも存在するが[1]、定着した使われかたであるかは不明である。

[編集] 他の付属装置類

  • 推進ブースターが発射時の加速補助のために外部装着される事もある。
  • ジェットエンジンが採用されていれば弾体の一部に開口部が設けられ、空気取り入れ口が装備される。そういったミサイルでは操向翼とは別に主翼とも呼べる大きな翼を備えるものが多い。
  • 巡航ミサイルは誘導装置の一部として電波高度計を備えるのが一般的で、衛星位置情報システムや地形地図情報システムも備えるものが多く、そういった装置のアンテナが露出される。
  • 小型ミサイルでは誘導用のワイヤーを尾部より繰り出すものがある。

[編集] 有効性

ミサイルの有効性を計る数値にSSKPとSSHPがある。

ロックオン確率:終末誘導装置が目標をロックオンする確率
誘導確率:規定のミスディスタンス内に誘導する確率
任務信頼度:発射から弾頭の作動までのミサイルの信頼度
弾頭効果:規定のミスディスタンス内で弾頭が目標を破壊する確率

[編集] SSKP

SSKP(Single shot kill probability)は主として対空ミサイルの評価に使用される。

SSKP = ロックオン確率 × 誘導確率 × 任務信頼度 × 弾頭効果

[編集] SSHP

SSHP(Single shot Hit probability)は主として対艦ミサイルや対戦車ミサイルの評価に使用される。

誘導確率:目標に直撃出来る誘導の確率
SSKP = ロックオン確率 × 誘導確率 × 任務信頼度[1]

[編集] 命中精度

詳細はCEPを参照

[編集] 射程距離

発射地点から攻撃可能な目標地点までの最大距離が射程距離である。地対空ミサイルや艦対空ミサイルでは重力に逆らって上昇するのに推進力が消費されるため、水平距離だけでなく高さも含めて表現されることが多い。 小型ミサイルでは多くの場合、弾頭部の種類別にミサイルの型名が付けられているため、射程距離も一意に決まるが、大型ミサイルでは弾頭を指定せずに射程距離だけが語られる場合があり、重い弾頭を運搬する場合と軽い弾頭を運搬する場合では自ずと射程距離が異なることが考慮されていないことがある。軍事にあまり詳しくない人の発言において顕著であり、極端な場合にはブースターロケットの有無も考慮されない場合がある。 すべてのミサイルは発射時には爆発しないように作られており、その多くが安全装置や誘導装置の動作手順の都合によって、最短有効距離や最小有効射程などと呼ばれる攻撃に使用しても動作が保障されない距離が設定されている。

[編集] 発射方式

ミサイルの発射には複数の方式がある。

  • 航空機発射
    • オンランチャ式
    • オフランチャ式
    • パラシュート式
  • 車両発射
    • ブースターロケットモーター式
    • 分離型ブースターロケットモーター式
    • 無反動ガス発生装置式
  • 艦船発射
    • ブースターロケットモーター式
    • 分離型ブースターロケットモーター式
  • 潜水艦
    • ガス発生装置式
    • 圧縮空気式
  • 地下サイロ
    • ブースターロケットモーター式
    • 圧縮空気式
  • 人間
    • 分離型ブースターロケットモーター式
    • 無反動ガス発生装置式[1]

[編集] 新たな技術

無人で放たれた後は短時間飛行の1度限りの使用であるため、高熱や振動・圧力に起因する疲労の強度低下や再使用の整備は考慮せずに済み、比較的新しい技術を導入しやすい兵器である。

[編集] ステルス

排気煙は以前から目視によって発見されるために、固体推進剤に白煙の元となるアルミニウム粉を加えないことが求められている。さらには排気炎も出さずに済むように新たな推進剤が求められている。

ステルス性を高めるために、外殻を金属からプラスチックへ変更することが研究されている。

[編集] 安全性

主に艦船から発射されるミサイルでは、戦闘による被弾時や平時でも事故による火災時などでも、搭載するミサイルが次々に誘爆する最悪の状況を回避できないか検討が行われている。 固体推進剤は通常の推進時の燃焼でも、爆燃せずに燃焼するのみであるが、火災に曝されて長時間加熱を受けると、ミサイル内部の推進剤全体が自己発火寸前の状態(スロークックオフ)となり、やがて何かのきっかけで火がつくと燃焼や爆燃を超えて爆轟することが知られ(英駆逐艦シェフィールド(HMS Sheffield)の沈没原因)、ミサイル側の技術開発や新たな設計による改善が求められている。 艦船用ミサイルの推進剤に限らず、同様のリスクを低減するための弾薬はLOVA(Low vulnerability ammunition、低脆弱製弾薬)とも呼ばれ、以前から研究が進められている。 1988年から米国防省は三軍共同で、熱や衝撃によっても予定外には爆発しない弾薬類とその周辺システムの開発を目指した、IM(Insensitive Munition、不感弾薬)プロジェクトを開始した[1]

例えば、固体推進剤を納めた外殻をらせん状の薄い鋼板の3-4層で構成して、火災による過熱や被弾による衝撃でらせんが解けるように製造しておき、固体推進剤が燃える場合でも閉鎖されたモーターケース内部で爆燃や爆轟せずに、解放された環境で燃焼するようなものが開発されている。 スロークックオフへの対策として、コンポジット推進剤の基材では主流となる過塩素酸アンモニウム(AP)の中に自己発火点がAPより100度程度低い硝酸アンモニウム(AN)を少量加えることで、APより先にANに発火させ爆轟以前に燃焼で済ます工夫が行われている。 同様に、推進剤に固体と液体に2種類を使うハイブリッド・ロケットエンジンは、燃焼に必要な燃料と酸化剤がミサイル内でも離れて収められているために、火災や衝撃によってもそれほど急速に両者が反応すること起こらず、比較的安全が保たれると期待されている。液体の酸化剤もゲル化できないか検討されている。

[編集] ミサイルに似ている兵器

[編集] 水中ミサイル

ロケット推進魚雷は水中ミサイルと呼ばれる場合がある。実用化されたものにはロシアのシクヴァルがあり、イランもフートという名前の非常に似た高速魚雷を開発したと公表した。

[編集] 誘導爆弾

航空機から投下される誘導爆弾(スマート爆弾)は、ミサイルに等しいものとして扱われることがある。

[編集] 軍用UAV

21世紀に入って多様な軍用UAV(無人航空機)が現れ、これらの中には搭載兵器が尽きたり高価値目標を発見すれば自ら自爆攻撃することを予定されるものがあり、ミサイルに分類される巡航ミサイルと航空機に分類されるこれら新型UAV兵器との境界があいまいになってきている。

[編集] 火箭(かせん)

古代中国の兵器の一つ{年代:13世紀頃(推定)}、火薬(黒色火薬)を燃料として使い、火薬の燃焼ガスの噴射で目標まで飛ぶロケット矢のことを火箭という。(現代の中国では「火箭」はロケット弾のことをいう) 発射するときには弾道を安定させるために、傾斜のついた発射台、升目が区切られた箱や筒を使って発射する。 最大射程は約800m、有効射程は約500m。 命中したときに残った燃料による焼夷効果もあり、燃料が入った筒の先に特殊な成分を詰めて、火炎放射や毒ガス攻撃をすることも出来る。 バリエーションが豊富で、威力を増すために鏃(やじり)を改良した飛刀箭(ひとうせん)などがある。一窩蜂箭(いちかほうせん)、「多発火箭」ともいい、連射性の高い火箭。火龍出水、推進用の4本の火箭を装着した、多段式のロケットの一つで、筒の中に数本の火箭を内蔵し、推進用の4本の火箭に点火して発射し、ある程度飛行した時点でその火が内蔵の火箭に結び付けられた導火線に引火し、筒に内蔵された火箭が目標に向かって発射される。 この2段式の装置によって、最終的には約1~1. 5kmの射程距離があったといわれている。ちなみにこれは水上戦用の兵器である。

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[編集] 出典・注記

  1. ^ a b c d e f g 防衛技術ジャーナル編集部編 『ミサイル技術のすべて』 (財)防衛技術協会 2006年10月1日初版第1刷発行 ISBN 4990029828

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